廃屈な日々〜旅と廃墟の回顧録〜

静岡県を中心にちょっと違った旅の記憶と記録。

「明るい商店街」三和商店街 三重県四日市 (解体済)

(訪問日 2015年 夏頃)

 

三重県四日市市。過去の歴史を振り返れば四日市ぜんそくという公害があるように東海地方屈指の工業地帯だ。都市の規模としても工業だけでなく人口・商業ともに三重県の県庁所在地である津市を上回り最大となっている。

 

そんな三重県最大の都市である四日市。そこにあるという三和商店街が激渋だということで青春18切符を使って電車で行ってみた。

 

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どことなく懐かしい駅舎にまばらな人手。県下最大の都市にあるJR駅舎とは思えない規模だ。駅前にタクシー乗り場とあるが待っているタクシーはいない様子。

 

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ロータリーから見える景色も寂しい限りにある。

それもそのはずで、三重県はJRよりも私鉄である近鉄沿線に中心市街地を置いている。近鉄四日市駅から距離にすると1キロほど離れており、JR駅前は非常に殺風景だ。

 

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駅前の一等地であるがコンビニはおろか開いている商店もない。商店はないがパーフェクトなリバティーの教会はある。隣の建物はかつて何だったのだろう。事前に三重県近鉄沿線が栄えておりJR沿線は何もないと知っていたとはいえ、流石に予想以上だ。

 

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ロータリーを抜けるとアーケードを備えた商店が立ち並ぶ。ご覧の通り真っ白。四日市市といえば商店街の天敵であるイオン帝国ジャスコ発祥の地。そのお膝元で中心市街地でもない商店街のダメージは相当なモノだったのだろう。

 

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駅周辺は良くも悪くも寂れた町という言葉がぴったりだ。営業しているのか定かでない古い店舗が立ち並び、再開発に手を付ける様子は感じられない。

 

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すでに渋い街を堪能してしまった。その矢先、とんでもない建物を目にする。

 

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放つオーラ枯らして只者でない。恐る恐る中を覗く。どうやら飲み屋横丁みたいだ。地図を確認するとここが目的地である三和商店街であることが分かった。

 

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驚くほどに長い建物が何件か合わさって構築されている。さっき見た光景は氷山の一角。一見するとそれぞれが独立しているように見えるが看板建築で見せているだけで一軒の長屋にたくさんの店がある。

 

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茶店は営業していた。看板のパトランプなんかは名古屋近辺でよく目にするものだ。この辺りは名古屋のベッドタウンでもあるため引き継がれた文化がありそうな気がする。

 

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近くにはジモセンっぽい入浴施設もあった。これまた渋い。

 

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さて、周囲の散策はひと休みして明るい商店街へ行こうではないか。

  

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入る前はどこが明るいのかとツッコミしたくなっていたがアーケードの採光性が高く本当に明るい。雰囲気が暗いのは言わずもがな。

 

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飲み屋が多いものの精肉店の看板もあり、かつては商店街の名前の通りに様々な店があったのだろう。

 

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そうは言っても飲み屋だらけ。今でも営業している店は少ないものの、閉店した店からテレビの音など生活音が聞こえてきた。自転車やバイク、手入れされた植木鉢など確かに人は住んでいる模様。

 

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ただここで生活するのはなかなかのデンジャラス。崩壊している箇所が随所に見られる。

 

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そこら辺に危険を告知する貼り紙があり、剥き出しの木材とそれを隠すブルーシートと尋常でない光景が広がっている。

 

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多国籍な警告文、閉店の告知・・・・

気になるのが「♢この建物に立ち入るのは危険です」とあるがここ長屋ですけど・・・生活している人もいるんだけどな。

 

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頭上注意。

 

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崩落箇所を木材を咬まして補強しているようだが、普通に危険な状態。失礼かもしれないが人が住んでいるとは信じがたいレベルだ。建築基準法よ、もっとがんばれ。

 

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エアコンの室外機も危ない場所だなぁ。

 

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360°どこを見ても朽ちている。

 

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迷宮のように色々な場所に繋がっている。 

 

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これも通路だから凄い。

 

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足場の向こうは、普通の商店街でした。

 

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普通に渋い普通の商店街。普通に好き。

 

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昭和の残像よ、安らかに眠れ。

 

感想

倒壊寸前の巨大な家屋兼店舗の商店街。所々が崩壊しているが生活感のある店先から聞こえる微かな生活音。とても不思議な空間であった。足場を越えた先にある普通の商店街も何だか異空間に迷い込んでいた感覚を一層強くさせてくれた。


私が訪れたのは6年も前になるが、こうして写真を眺めていると当時の記憶が呼び戻される。四日市の町の様子や三和商店街を発見したときの胸の高揚は今でもはっきりと覚えていること。写真は今以上にヘタクソでブレまくり、縦構図ばかりと使い物にならないものも多かったがそれはそれで良いのだ。


タイトルにもある通り、すでに解体され更地になっている。2019年に解体されたらしい。昭和遺産が無くなるのはいつも惜しいと思うが、流石にここに住み続けるには危険すぎるから仕方ないと思う方が大きい。ここは終戦直後くらいに作られたということであるが近年になってその年代の木造物件の解体が進んでいる。待っている時間はないのにコロナの影響で思うように活動ができない。由々しき事態だ。