廃屈な日々〜旅と廃墟の回顧録〜

静岡県を中心にちょっと違った旅の記憶と記録。

神奈川県 藤沢市 赤線を歩く

神奈川県藤沢市

JR藤沢駅付近は東海道五十三次の宿があった場所で、古くは江ノ島や富士山を目指す大山道、現代では江ノ島を含めた鎌倉エリア観光の交通の要となっている。

そんなわけで昔から活気のあったこの場所。

例のごとく遊郭や特殊飲食店が並ぶ一体だったようだ。特に有名だったのが蔦の絡まったアーチが印象的な飲食店街の廃墟。残念ながら現在は解体済みとなっている。

 

JR藤沢駅

何年ぶりだろうか。初めて訪れたのは原作かアニメか忘れたが青い花江ノ電がタイアップした頃だから10年以上前か。直近だと2019年頃に立ち寄ったことがあるはずだから約4年ぶりの探訪だ。

 

もっとも立ち寄ったと言ってもビックカメラ目当てで街として向き合うのは初めてだ。

 

いや、昔に少しだけ歩いた記憶がある。

その時は小綺麗なイメージがあった街。だが視点を変えて見れば違った景色が見えるはずだ。しかし、あの頃は赤線歩きなんて趣味にするとは思っていなかったな。

 

そもそも小綺麗かという問題は置いておく。そういう印象だったのだから仕方がない。思い出はいつも美化されていくものだから。

 

ざっくりと地図を確認して歩く。

中心市街地の内面へ入っていく感じが堪らなく好き。

 

住宅街の一角に取り残されかのような古い飲食店の長屋がある。きっとこの辺りが藤沢新地のはずだ。

 

周辺は高層マンションを中心とした何の変哲もない住宅街。

 

入っているテナントの全てが小鳥に因んだ名前になっていることに由来した、通称「小鳥の街」と呼ばれた飲食店街があった場所も解体されてマンションになっている。

 

さっきの長屋に「ひよ子」と一応鳥に因んだ名前の飲食店があるのは一種の名残なのだろうか。いや、名残だと思っておこう。その方が浪漫がある。

 

そして、どこのマンションだったか。2005年辺りに発覚した耐震偽装事件の対象物件が建てられていたらしい。現在は建て替えを済ましているそうだが、街に歴史ありとはこのことだ。

 

さてさて、マンションの狭間を抜けると現役の飲食店が数軒連なっている。

 

 

 

こっちは現役でない建物。いわゆるカフェ建築なのが分かる。

 

下水工事のできない事情でもあるのか。

 

さらに抜けると不自然な空き地が広がっていた。

遠くの電灯に「朋友飲食会」の看板が残されている。きっとこの辺りにネットで目にした蔦の絡まったアーチのある飲食店街が建てられていたのだろう。

 

今となってしまえばただの空き地であるが、戦後のドサクサで建てられた物件は例外なく権利関係で無闇に取り壊せないと聞く。空き地になるまでも私の知らないドラマがあったのだろう。

 

空き地の逆側へ迂回。

ここから見る景色が何とも怪しくて良い。路地裏の医院と質屋が良い味を出している。朋友飲食店会の看板を入れるべき構図だった。

 

当時はきっと看板の裏に飲食店が広がっていたはずだ。

 

質屋の隣。良く見ると・・・

 

私道。

 

この辺りを見れば、ここがどんな場所だったのかと察することができる。

 

この場所と中心市街地は目と鼻の先。往来する人々はここに目もくれず先を急ぐ。

今となっては当時の名残も少なくなった藤沢新地。街歩きの楽しさを優しく教えてくれた。