廃屈な日々〜旅と廃墟の回顧録〜

静岡県を中心にちょっと違った旅の記憶と記録。

静岡市に眠る廃村 八草集落跡

(訪問日時 2021年5月)

静岡県静岡市にかつて存在した八草集落という廃村。

 

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静岡市に流れる藁品川の上流を目指して車を走らせる。

出発は日の出前。本当は深夜に出発して星でも撮ろうかと思っていたが遅くなってしまった。

 

舗装もされていない林道を車で走る。最近は昔のように無茶が出来ない。車で行けないことはないのだろうが、すっかり小心者の大人になってしまった。ちょうど良い駐車スペースを探して徒歩で集落を目指した。山々を眺めながらの気持ちのいい散歩になりそうだ。

 

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悪路を2kmほど歩いたか。

目印にしていた八草辻という場所へ到着。辺りを捜索していみたがそれらしき場所へ通じる登山道が見つからない。焦る気持ちを抑えて調べ直す。そして道を間違えていたことに気が付く。廃墟探索において情報収集は基本中の基本。そんな基本を疎かにしてしまった私はオロカモノ。言い訳をすると八草集落はネットで調べても正確な情報が少なく、とりあえずGoogleマップの示す場所を信用してみたが失敗だった。車へ戻り、別ルートへ大きく迂回する。

 

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90分ほど要して別ルートへ。こちらも流石に楽な道とはいかなそうだ。麓の集落から歩いて林道の行き止まりまで目指す。

 

太陽はすっかり高い位置。先ほどと違って汗ばんでくる陽気が急勾配と合わさって体力を奪ってくる。

 

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鹿の親子が道路へ出ていた。中央に小さく写るのが分かるだろうか。これでもかなりトリミングしたものなのだが・・・見にくいな。こういう時に望遠レンズを付けていたらと悔やまれる。

 

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鹿の出てきた場所は茶畑が広がっているが手入れはされていない模様。害獣用のネットも破られて出入りはフリーな状態。

 

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民家を発見。

綺麗な状態であるが人の気配はない。

 

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5月に入り、新緑が美しい季節がやってきた。廃墟とのマッチングは間違いなく美しいのだが、薮を漕いだり虫が多かったりと探索難易度が高くなるのが難点だ。個人的には冬の探索の方が好きかな。寒いし積雪や路面凍結で行けない場所も多いけど。

 

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廃屋の少し上に地域共同の製茶工場がある。新茶と言えば八十八夜。立春から数えて88日。本来ならばゴールデンウィーク返上で現在は繁忙期のはず。ここは可動しておらずカレンダーの日付はちょうど一年前で止まっている。

 

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製茶工場のポスト。すごく可愛いうさぎちゃん。

 

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さらに進むと廃屋がもう一軒。都会では許されないトイレの配置だ。

 

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軒先に咲く奇跡の蓮の花・・・・良く見たら造花でした。

 

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道沿いには荒れた茶畑が続く。遠くを見渡すと美しい茶畑風景が望める。しかし、この辺りは廃業してしまった様子だ。

 

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林道の終点を終え、登山道まで辿り着く。

 

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倒木を越えてすぐに家屋を発見。この家屋は手入れされている様子だが、下に見えたものは廃墟となっていそうだ。

 

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一般的に集落は森が切り開かれた場所にあるのだが、ここは森の中に建てられている。植林された杉の木は若いものが多いため、住人がいなくなってから植えられた可能性も考えられる。・・・いずれにせよここは林道の終点のさらに先。深い森の中であることには変わりない。
 

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一歩踏み込めば極上の廃空間。ここに言葉はいらない。

 

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過去と現在の狭間。

電気も通って近代的ではあるけれど、どこか懐かしい日本の原風景がここにはあった。

 

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廃屋は暮らしの色が濃く残る。縁側や囲炉裏のある暮らし。憧れたことはあったけれど、今とは比べ物にならない不便さというものもあったのだろう。レトロな家電もエイジングが進み、いい味が出ている。現在、私が使っているパソコンやスマートフォンもいつかはレトロと呼ばれる時代が来るのだろうか。

 

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森の中に放置された洗濯機。うっとりとしてしまう美しさがあった。

 

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洗濯機の近くに小屋が一軒。中にはタンスが残されていた。

 

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付近には落とし物もたくさん残る。酒瓶らしきものが多かったが業務用のたれは住人が使っていたのだろうか。

 

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廃屋を後にして周囲を探索する。石段がたくさんあり、平地を築いている様子だが家屋は見当たらない。

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開けた場所を目指して上へ登る。こんな時期に残雪かと思ったら綿だった。

 

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付近に廃屋をもう一軒見つける。

この辺りは日当たりが良い。・・・日当たりが良いからこそ虫だらけ。カメラを構えて立ち止まろうとするならば秒でタカられてしまう。サクッと撮ってその場を離れるとしよう。

 

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虫がいなければじっくりと撮りたい場所だった。そんな虫ごとき・・・と思われるかもしれないがビビりなのだから仕方がない。

 

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火事なんて起きた日には大惨事になりそうだ。

 

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信仰の後も微かに残されている。辺りを探せばまだ何かあるかもしれないが虫の襲来にすっかり萎えてしまった私は帰ることを決意する。

 

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荒れた茶畑を眺めながら来た道を戻る。日当たりが良くなり、蜂がぶんぶんと舞う道路を心の中で悲鳴を上げて帰っていく。

 

感想

信じられないくらい深い森にあった集落。現存する家屋は少なかったが残留物のクオリティも高く、満足のいく探索結果を得られた。事前の情報収集もそうであるが、虫除け対策など反省も多くあった。それにしてもここにいた住人はどんなことをして生計を立てていたのか。やっぱりお茶を中心とした農業なのかな。集落へ向かう途中に荒れた茶畑が目立っていたが、お茶王国静岡の衰退原因の一端を垣間見た気がする。この辺りは高齢化や過疎化から後継者不足で茶園閉鎖と負のサイクルを回しているようだ。昨年のお茶産出額で静岡県は史上初めて鹿児島に抜かされたということであるが、茶園の環境を考えるとそれも仕方がないように思える。追われる者より追う者の方が強いと仁義なき戦い菅原文太も言っていたがこれからの巻き返しに期待したい。・・・とは言っても出荷量じゃまだ静岡県に軍配が挙がっているだけどね。