廃屈な日々〜旅と廃墟の回顧録〜

静岡県を中心にちょっと違った旅の記憶と記録。

戦後日本で初のアーケード建築 沼津アーケード名店街を歩く

訪問日 2021年 7月15日

 

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とあるアニメ映画を鑑賞するため静岡県で唯一上映されている沼津市を訪れた。

 

少女歌劇レヴュースタァライト・・・TV版は未視聴であるが物凄い作品だった。

社会人になってアニメをあまり観なくなったがここ10年で一番の衝撃。実写映画含めても一番じゃないかというくらい。とにかく凄いものを見てしまった気分で終始アドレナリンが止まらなかった。久しぶりにもう一回劇場で鑑賞したいと思うのだが、この日が沼津では千秋楽だというのが現実だ。

 

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そんな心のスキマを埋めるため夜の商店街を歩くことにした。

静岡県沼津市といえば中心市街地に多くの商店街を有している。最近ではメイン通りの仲見世商店街なんかはラブライブ!サンシャインの効果もあって活気が戻っているという話だ。今回訪れたのは駅前から少し離れた沼津アーケード名店街。若者向けの店も数店あるがほとんどは渋めの昔ながらの店舗が並ぶ商店街だ。いっけんすると普通の商店街なのだが、歴史・特色ともに非常に興味深いものがあり、その部分についても触れていきたい。

 

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もうこのアーチ看板だけで最高だ。

THE昭和の商店街という感じで「ド」の点々が星マークなのがオシャレ。

 

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アーケード名店街の入り口から。

ここの路地にあたる店舗はすべて曲線のデザインで統一されている。

 

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正面から撮ると信号機が見事に邪魔してくれる。うーん、憎いね〜。

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商店街側から撮るとgoodな感じ。1枚目の写真の使いまわしなのは内緒。

 

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ここは有階アーケードという仕様で店舗兼住宅の1階部分を切り抜いたような形で屋根を形成している珍しい商店街。全長200mの全ての店舗がこの形式であるというのは本当にお目にできない。ちなみに竣工は1953年。戦後日本で初めてのアーケード建築という歴史を持っている。

 

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 さてさて、全ての店舗が同じ形式ということは建設当初より思想・構想があったということとなる。 店舗を見ると木造建築が無いことにお気づきか。

 

そう、ここは全面コンクリート建築であり、商店街自身が火災の延焼を防ぐ役割を持った防火帯として竣工されているのだ。 

www.numazu-arcade.com

 

詳しくは商店街のHPに解説があり割愛するが、地域の生活を支えるだけでなく身を挺して火災からも守る・・・素敵やん。

 

親切丁寧な解説でアーケード名店街がもっと好きになること間違いなし。今すぐリンクを踏んで欲しい。

 

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私の祖母は沼津市出身ということもあって、この辺りは空襲の被害が大きかったと聞かされていた。そのような背景から 火災の延焼を防ぐ役割を持つ防火帯建築の形成は待ち焦がれていたのだろう。

 

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そんな輝かしい歴史も今は昔。ただ通り過ぎるだけでは普通に寂れた商店街という印象だ。

 

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そんな背景を知らずとも店舗に突き刺さるような形の歩道を覆う屋根、魅力的な曲線を持つ店舗・・・きっと好きになる場所だ。

 

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アーケードを冠する店舗も多い。

 

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夜でも明るいし木々と花々もよく管理されている印象。置かれたオブジェもピカピカだ。

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いちおうラブライブ!サンシャイン人気にも便乗している。こっちからの方が看板はバッチリ写せるけどな。

 

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北側のアーチ看板は残念なことに骨組みだった。

 

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骨組みアーチを越えると普通のアーケード商店街が待っている。その先は沼津港だ。

 

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感想

現在ではお目にかかれない都市風景が広がる商店街。夜でも明るく歩きやすかった。

商店街というのは意外にも昭和期以降に形成されているものが多い。ここも例に漏れず戦後に作られた商店街であるが、都市の不燃化構想の枠組みで民と官が一体となって建築した珍しく貴重な物件だ。都市の火災延焼といえば新潟県糸魚川が記憶に新しく、不運にも風下に木造建築が密集しており広がっていった。今でこそ防火帯という言葉は聞き馴染みないものの都市を形成する上では重要な役割を持っているのだろう。

 

どんな商店街にも歴史があり探訪の際は歴史を調べたり、その土地の文化や産業を照らし合わせてみるのもオススメだ。アーケード名店街のHPは詳しく解説があり非常に良い。
 

 そして、レヴュースタァライトは映画館で見るべき作品だ。観ていないそこの貴方は今すぐ劇場へGO。私も越県待ったなしだ。