静岡県下田市の白浜海岸から市街地へ向かう道路沿いには2軒の廃ホテルがある。
そのうちの1軒が下田御苑ホテル。過激派の隠れ家だったとか噂のある部屋が全国的に有名だ。創業は1960年代で2000年代までは営業されていた7階建ての規模を誇るホテルだ。
外観から廃墟だと分かりやすい。看板と塗装は剥がれ落ち、見事なまでに植物に侵食されている。
これは誰に向けて貼ってあるのか・・・
きな臭い広告の先は荒廃が進んだ世界が待っていた。
ロビーには当時の面影は残っていない。人工的な破壊よりも自然に朽ちていった印象が大きい。
散乱しているのは腐敗した布団たち。他の階でも見られるが1階は特に多かった。
食堂へ到着。若干窮屈そうだが収容人数は充分。舞台もあり、目を閉じると賑わいの声が聞こえてきそうだ。
花柄のポットが可愛い。最近では本当に見なくなった柄だ。
どこもかしこも荒廃具合がすごい。
なかなかに素敵な厨房。
かつらむき器のお姉さんは元気だろうか。
階段も場所によっては物で溢れていたり、絨毯が腐食していたりと様々であった。青い絨毯というのも海の近いホテルっぽくて素敵。
進むのは大変であるがどこの廊下も違う表情を見せてくれた。
部屋はシンプルな和室が多い。レトロな家電が旅情を刺激する。
このテレビとこの扇風機で夏の夜を過ごしたいなぁ。
もちろん部屋によっては旅情どころではない。
さて、ここがとある一室。
妙に生活感のある部屋であるがここが過激派の部屋と呼ばれる場所だ。
周囲には花火が散乱し、机を見ると火薬だけ取り除いて鍋に集められている。過激派の革命戦士がここに潜伏し、爆弾を作っていたとか何とか・・・
さすがに噂の域を出ないだろうが真相は不明だ。
洋室もあった。部屋中が獣臭く、野生動物の寝床となっていそうだ。
ユニットバスで湯船も付いている。タイル貼りがオシャレ。
壁紙をよーく見ると鳳凰が描かれている。
壁紙は部屋によって違うみたい。
懐かしい雑誌や新聞もいっぱいだ。
給湯室。これはどこのホテルにもあるだろう。
次は少し珍しい部屋へ。
ジャジャーン!
なんと防音設備を備えた音楽スタジオが数室あるのだ。
ここはどんな人が利用していたのか。バンドの合宿にでも使われていたのかな。
最上階の窓から民家が見える。不思議な光景だが経営者の住宅のようで7階の扉から行くことができた。
鉄は腐食でスカスカ。コンクリは陥没とデンジャラスな通路だった。
内部もホテル以上に荒廃が進み非常に危険な状態だ。
屋上からは近くの外浦海岸を眺めることができる。曇っているのが残念だが見晴らしが良い。
非常階段。非常時でもできれば使いたくない。
大浴場と言うには少し規模が小さい浴室。
レトロな自販機。どんな飲み物が売られていただろうか。
1階へ戻るとパンフレットを発見。琴の調べが流れるゴージャスで和風なホテルだったみたい。今では道路を走る車の音が静かに聞こえてくるだけだ。
感想
崩壊系のホテル廃墟。人為的ではなく、あくまで自然に朽ちている印象が強い。振り返ってみると見所も多いし、悪くないような気がする。ただ、探索時にはもう来ることはないだろうと思った物件だ。こうやって回顧してみるとまた行ってみたくなってしまうのだから廃墟には不思議な魅力があるのだろう。単に私が廃墟に魅了されてしまっただけなのかもしれないが・・・