廃屈な日々〜旅と廃墟の回顧録〜

静岡県を中心にちょっと違った旅の記憶と記録。

廃線探訪⑤ 能登半島に眠る廃線を訪ねて のと鉄道能登線

未来へ紡ぐ能登線の駅舎たち。

これまで訪れた能登線の駅舎は当時のありのまま残っていた。

今回、訪れた駅舎は観光の拠点になっていたりアート作品になっていたりと姿形を変えて地域に残り続けている物件ばかりだ。思えば七尾線の輪島・能登三井駅も同様で観光資源として廃駅を見ることができる。役目を終えても地域に貢献し続ける姿は感慨深いものがあり、当時の面影が見えなくてもノスタルジーを感じてしまうから不思議だ。

 

 

14.宇出津駅

アクセス:★★★★★(観光・地域交流センター併設)

保存:★★☆☆☆(駅名標・トンネルが残る)

寂びれ:★★☆☆☆(整備・管理されている)

おすすめ:★★☆☆☆(当時の雰囲気は少ない)

 

宇出津駅の跡地は鉄道緑地広場として整備されていた。

 

能登町観光・地域交流センターに併設されているため駐車場所には困らない。

 

鉄道緑地広場の遺構は駅名標くらい。

レールのあった場所が遊歩道として整備されている。

 

後ろに見えるのが”コンセールのと”という施設。

町の観光・イベント情報の発信の他に土産屋や喫茶店が併設されていた。

 

レールに沿って道路へ出るとトンネルの跡が残っている。

 

こちらがトンネル跡。

民家の中に線路があった様子が伝わってくる。

 

ぱっと見でバリケード的なものは見られず。立ち入り禁止だけどね。

 

現役施設の管理地ということで退廃的な美しさや楽しみを期待して行く場所ではない。

だからといって、魅力が無いかと言えばそうではない。廃駅特有のノスタルジアは感じることができた。痕跡もほぼ残っていないのに何故だろう。姿形は変われど、廃駅跡には感性へ訴えかける何かがあるに違いない。

 

 

15.松波駅

アクセス:★★★★★(駅前に駐車スペースあり)

保存:★★★☆☆(ほぼ残っているが駅舎改修済み)

寂びれ:★★★★☆(現在は管理されていない)

おすすめ:★★★☆☆(雑草が多すぎた)

 

宇出津駅と松波駅の間には複数の駅があるのだが、時間の関係で訪問できなかった。

 

大きめのロータリーはバス停として現役。駐輪場も残されていた。

 

駅舎は廃線後に改修され、松波城址情報館「奥能登トリビア」として使われていた。

ただし、見ての通り現在は閉館している模様。トリビアという言葉が平成臭くてグッときます。へぇ〜。

 

松波城に関連する資料など展示されていた様子が伺える。開館と閉館の時期を調べてみたが不明。遅くとも2009年には開いており、2010年代の中頃までは訪問したブログ記事が検索でヒットした。

 

現在は管理されている様子もなく、藪が生い茂っている。

 

裏側はどうでしょう?

 

ホームの待合室と屋根付きベンチがかろうじて見える。

 

踏み跡があったため、近づいたが・・・うーん、藪が深すぎる!

 

待合室の中にも伸び放題の雑草たち。

 

ここから踏み跡も消えてしまい、本格的な藪漕ぎが必要であった。

この場所も時期が悪いというのか、もう少し雑草が控えめなら駅ホームの雰囲気があったと思う。

 

写ルンです」じゃなくて「コニカMINI」

コニカミノルタの精神はSONY「α」が引き継ぎましたよ。

 

 

16.飯田駅

アクセス:★★★★☆(少し分かりにくい場所)

保存:★★★★★(ほぼ全て残る)

寂びれ:★★★★★(当時の面影が色濃く残る)

おすすめ:★★★★☆(緊張感のある廃駅)

 

珠洲市の市街地にある飯田駅

幹線道路から近い住宅街に残る。広いロータリーに駐車できるスペースあり。

 

こちらの駅は奥能登国際芸術祭という珠洲市全域を舞台にした芸術祭に出典された経歴を持つ。

 

作品としては、駅舎内が黄色く塗られたということで名残が見られる。小さな忘れ物美術館とあるが、駅舎全体がひとつのアート作品として出典されていた模様。

 

駅前のベンチも風格たっぷり。電話番号が短いっすね。

 

アート作品会場ということで放置されていたり、管理が明確だったりする他の廃駅とは違った雰囲気だ。何ていうのか、入ってはいけないようなオーラを感じる。

 

そういう緊張感は廃墟巡りでは珍しくはないのだが、久々な故にどうも落ち着かない。

 

長い階段を登ると駅のホーム。貨物車両が待っていた。

 

おそらく20年近く残る貨物車両。

 

進むも戻るも何もできない車両を骨組みになった屋根が見つめる。

 

JR貨物広島車両所のロゴ。

 

もはやこれは天然のアート作品に違いない。

 

誰もいなくなった駅に広がる深い緑。

見所が豊富で廃墟美も充分に感じるのだが、まとわりつく緊張感がノスタルジーに浸ることを許してくれない。どこか手放しでおすすめできない緊張感のある廃駅だった。

 

 

17.珠洲

アクセス:★★★★★(道の駅併設)

保存:★★★☆☆(駅のホームとレール)

寂びれ:★☆☆☆☆(賑やかな装飾)

おすすめ:★★☆☆☆(やや装飾過剰)

 

※今回訪れた時は奥能登国際芸術祭へ向けての装飾があった状態でした。それに加えてスキップとローファーというアニメのコラボも実施中ということで普段の雰囲気とかけ離れていると思われます。

 

珠洲駅はホームとレールの一部が残る。

道の駅すずなり館に併設されておりアクセス抜群で駐車場にも困らない。

 

こちらが珠洲駅のホーム。

芸術祭に向けて装飾が施された駅のホーム。制作が続けられていたため近づけなかった。道の駅という地域の顔としては寂れた駅の一部をそのまま保存するよりも正しい姿かもしれないが、個人的には残念。

 

アニメも好評に終わったスキップとローファー。

そういえば主人公みっちゃんは能登半島出身。”いかじま”は蛸島という地名をもじった作品に登場する架空の地名。普段は珠洲駅の駅名標があるみたい。

 

1番ホームの看板は良い感じなのだが、いかんせん装飾が多い。アートって難しいっすね。

 

裏側にはレールの一部が保存されている。

 

レールは他の駅であまりお目に掛かれていないため貴重だ。

 

そういえば穴水駅にあった花咲くいろは等身大パネル

あれも昔は目立つ所に展示されていたのか、はたまたそれを目当てに人が集まったのか・・・。ちょっとエモーショナルに思えてきたぞ!

 

 

次回でラスト。

能登線の終着駅である蛸島駅で締め括ります。