行くあてもなく北陸をふらり。
そんな帰り道、たまにはご当地グルメでも洒落込もうとJR富山駅へ寄ってみる。
富山ブラックラーメンで栄養を補給した後は吸い寄せられるように駅前商店街を彷徨った。
ふらり、ふらりと行き着くはては新世界。
今宵もまた深淵へ迷い込む。
蔦と
蜘蛛の巣をくぐったその先は・・・
昭和の世界が広がっていた。
今回訪れたのは富山県富山市にある昭和24年創業とある小さな飲み屋街。
商店街を探索していたら偶然見つけた戦後の匂いが色濃く残る一画だ。どうやらこの周囲は赤線地帯だったらしく、その名残とも言うべき場所だろうか。
モルタル2階建ての長屋で上階が住居スペースとなっている戦後のドサクサ臭のある物件だ。
駅前商店街と目と鼻の先であり、閑静な住宅街の中で時間が止まったかのように長屋2軒で横丁を形成している。
存在感がすごい。
ところどころで真新しい看板となっているが雰囲気は戦後そのもの。生々しさすら感じられる。
居住スペースと一体となっているのも戦後物件の特徴のひとつ。
遊郭で見られる丸窓の意匠が残る。
これを発見した辺りでこの物件について調べてみたのだが、結構な有名スポットだということが分かった。
この近辺は戦前に遊郭があったそうだが昭和20年の空襲で失ってしまったということ。富山市の市街地は空襲で破壊率99.5%というとんでもない被害があったそうだ。そんな焦土化した土地からたった4年でここは創業している。
そんな歴史がありつつ今も続いているのだが、この日はコロナウイルスの影響で全店舗が営業していなかった。
静まり返った飲み屋街にひとり。往年の時を思い浮かべつつ不可思議な気分で時を過ごした。
新世界のすぐ近くの川沿いにそれぞれ延命地蔵尊がある。
その近くにある商店街もごたごたした雰囲気が強く残っていた。
商店街のアーチというのか地蔵尊のアーチか。
青信号の横断歩道、振り返ってアーチの写真を撮っているとパトカーから拡声器で「止まっていると危ない」と叱られた。
何だか現実世界に引き戻された気分になった私はバツが悪そうに足早に去った。