神奈川県で一番有名な廃墟と言えばここだろう。
真鶴町にある未成コンクリ物件でグラフィティアートで埋め尽くされた圧巻の場所。もともとは今から40年ほど前に海の見える焼肉店として建設されたのだが、建物完成後に安全上の問題が見つかり、そのまま放置されてしまった物件だ。以上のことから「ブロックアート」「焼肉要塞」などと呼ばれている。
海の見える焼肉店の名は伊達じゃない。
小高い丘から海を望むとかではなく、海のそばの崖だ。文字通り断崖絶壁に沿って建てられている。4階建ての建物は道路から見ると地下に建っていることになる。
内部は昼間でも薄暗く、壁という壁にグラフィティアートが描かれている。
侵食されるエヴァ参号機。
見ての通りクオリティが凄まじいのだが、これに限らず昔に比べると落書きが増えてしまっているのが残念だ。
私自身、数年に一度はこの場所に訪れているが2019年頃から残念な落書きが増えていった印象がある。初めて訪れた2015年は今ほど多くなく、壁1枚1枚がキャンバスの様に作品が描かれていた。
ドラクエのダンジョンみたいな階段で上下を行き来する。
ここの禰󠄀豆子ちゃんはちょっと面白い趣向がある。
じゃん!
手前の壁の穴を覗くとこんな風にお顔と作者のサインが見える作りとなっている。
こちらは躍動感の凄いパーマンのアート。
腐った死体があらわれた。
メラでもくらったのか黒焦げである。
昔は来るたびに変わるアートが楽しかったのだが、有名物件の宿命ともいえる破壊の連鎖は止まらない。
立地の安全問題は置いといて、景観だけは良い場所には間違いない。断崖絶壁で海が間近と体験を重視する現代でも通用しそうな考えだと思う。ただ、素人の私でも安全性に疑問を感じるが。
ここへ来たからには見ないと行けないグラフィティがある。
シシ神さま!
場所が場所だけにお顔が無事でよかった。
それにしても脚立でも運んで描いたのかね?
ここも相変わらず落書きだらけ。
グラフィティアートの世界には自分より下手だと思ったものの上にしか描かない暗黙の了解があると聞いたことがある。HIPHOPアーティストのSKY-HIさんやLick-GさんのPVなんかでも使われているのを見たことがある。SNSの普及でそういう世界でない者の流入が多くなったのだろう。
最近は新しい作品自体も少なくなっている印象で、その界隈の人からすれば終わってしまった場所なのかもしれない。
そこら辺に転がるスプレー缶の容器も以前に比べると真新しい物が減っているのもそれを物語っている。
さて、気を取り直して最下層に向かう。
最下層に待つは魔王デスピサロ。
ドラクエⅣのラスボス。進化の秘宝を自ら施して異形の姿になった魔族の王。
さて、以上が2023年の姿。
ここからは2015年に撮影したものと見比べてみよう。
現在と同じく壁という壁にグラフィティが描かれている。ただし、比べてみるとどこかさっぱりしている印象。
それもそのはず、残念な落書き自体が見られない。壁一枚が一枚のキャンバスの様に作品を鑑賞できる。スプレー塗料の劣化の影響なのか、現在と比べると色乗りが良い気がする。
マスターピース達も本来の輝きを見せてくれている。
もちろん残念な落書きも既に存在していた。
現在では上書きされてしまったアートも多い。
同じ様な構図があったので比べてみた。
撮影時の状況や設定の違いで色味がかなり違う。厳密な比較にはならないが参考までに。懐古主義ではないが、昔の方が良かったと言わざるを得ない・・・かも。廃墟として、ではなく、グラフィティの聖地としての旬はもう過ぎてしまっている。この先も荒れる一方と考えると少し寂しさを覚えるものだ。