前回の記事であるメッシーナ美術館の敷地内。
その隣には運営の母体であった証券会社の研修所兼保養所の建物が残っている。
美術館より若干高台に位置し、山中湖を見渡すことができる。洗心寮という施設であるが、美術館よりも少し時間を遡った高度経済成長期の面影が色濃く残っていた。そして、非常に珍しい地下金庫の廃墟も見学してきたので併せて紹介したい。
さっそくグラフィティが見えている。
見た目は無機質なコンクリートが印象的で年季を感じる。
1階は駐車場だったのか階段を登って2階部分がエントランスとなっている。
艶のあるタイル張りが昭和然としていて素敵だ。
ホテルのような受付は無いがたくさんのグラフィティが歓迎してくれた。
廊下を通り抜けると食堂が待っていた。
窓際が曲線を描いたガラス張りになっていて山中湖を見渡すことができる。
かつてはイケイケだった証券会社らしく、ただの研修施設にしては立派に見える。
黄色い絨毯とガラス張りの曲線が昭和的。絨毯とウエスタン風?なキッチンを併せて見ると1970年代の映画のような色彩だ。
廃墟と落ち葉の組み合わせはいつだって情緒的。
私は過ぎ去った過去に想いを馳せてしまう。あなたは何を思う?
誰がいつ貼ったのか分からないThe Beatlesの貼り紙。ひらがな表記の洗い場と合っていないようで調和されているようにも見える。
暖炉まで備え付けられているとは凄い。ガラス張りの景観も申し分もない。こんな場所で朝食を食べれたら嫌な会社の研修も楽しいだろう。
そういえば実家近くの動物園にあった食堂がこんな感じだったような・・・
現在では改装されて見る影も無いが。
食堂を抜けて進むと和室があった。離れにもう一軒。
3枚目右隅に小さい出入り口がある。
これはにじり口といって、ここは茶室のようだ。狭くて小さい入り口はどのような身分でも平等ということを示すための装置。千利休がいた戦国時代を想像してもらえれば分かりやすい。偉い身分である武士も刀を外して頭を下げなければくぐれないということだ。
3階部分が宿泊施設となっている。
日没の時間となったが探索は続行だ。ここ数年活躍した日本のHIPHOPアーティストの名前が描かれている。
学生時代、筆箱に落書きする感覚か。ただ何となくミーハーぽくて好きにはなれないな。
最初に入った部屋は市松模様がお洒落な洋室。
研修施設らしくこの部屋に8人が宿泊可能だ。寝ること以外は想定していなさそうな質素な設備。
小5の時に行った林間学校の少年自然の家がこんな雰囲気だったなー。
角部屋はもっとすごい。部屋面積自体は先ほどの部屋より2倍程度大きい。
食堂で見られた牧歌的雰囲気から一転、すし詰め状態。いびきのうるさい人と同室になると大変だ。
暗い廊下を歩く。陽の届かない場所はもう真っ暗。
男子トイレは安定の小ささ。現代の街中で見かける刈り上げツーブロ七三分けのギラギラした証券マンには似つかないサイズ。
和室もあり、こちらは昔の保養所らしく最低限の設備でのんびりした雰囲気。
ここも和室。何か白い物体が中央にあるが・・・
邪神さま!
なんなんですかね、これ。
辺りには紙粘土が置いてあり、ここで造形された様子。
廃墟で見かけた謎の造形物が数多くあるがこれはトップクラスで意味不明だ。
おそらく誰かが紙粘土を捨てたのをまた別の誰かが作ったと読むが真相を知る術はない。
・・・これだから廃墟は面白い。
突き当たりにある扉を開けると全面が焼け焦げた大部屋に。
さっき和室で見かけたニョロニョロのモノクロverがおりますな。
美術館と山中湖がよく見える。
これで洗心寮は一周。さて帰ろう。
・・・なんてね。金庫を探しに敷地内を歩く。
なんかあった。結構分かりにくいし、地下ではあるが地上からも行ける。
知らなかったらスルーしてたかも。
中は真っ暗。ライトを焚いて探索する。
90年築というバブル全盛期で証券会社も栄華を極めていた時代の忘れ物。
うん。酷いね。
クールなコンクリが台無しだよ。
おぉ!凄い。
重い重い金属の扉。ライトが反射してしまっているのが惜しい。
ライトあっても無調整だとこんなんだし、仕方がない。
金庫の中は空っぽ。
バブル時代の金の音、諸行無常の響きあり〜。うーん、盛者必衰の理をあらはす!
何も残されていない暗闇だけの世界。けっこう怖い。
私は別に閉所恐怖症でもラ暗闇が苦手なわけではない。心霊的なものはもちろん怖いが人間の方がもっと怖い。
何が怖いってこの扉。これが何かの拍子で閉じ込められてしまう気がして仕方がないのだ。
見ての通り、サビサビで締め切られることはないのはわかるのだが嫌な予感しかしない。
もう少しプラス思考であったら人生も楽しかったろうな。
さようなら、洗心寮。
こうやって改めて見ると逆三角形で不思議な形だこと。
感想
高度経済成長期の研修施設兼保養所とバブル時代の金庫と美術館・・・日本が元気だった時代を駆け抜けることができた。
いずれにしても金の臭いがする場所だ。美術館と金庫はもちろん、保養所もだ。ここみたいな湖畔にはこのような企業が保有する建物や土地が多い。山梨県や隣の長野県だけで結構な数があるはずだ。金の臭いとはいえ、すでに廃墟なのだから残影みたいなもの。かつて栄華を極めたものたちの成れの果てというやつか。
洗心寮という名前について、私の想像であるが「心を洗う寮」という意味なのか・・・?
だとしたら結構怖い。コンプラ的には今よりも緩い時代。管理者養成学校的なことでも行われていたのか。研修を終えた後は心が洗われて生まれ変わるサイコでカルトな研修が行われていたとかいないとか。うーむ、やはり人間が一番怖い。
ちなみにこの金庫は日本の廃墟の中でも海外でかなり有名みたいだ。
富士山の写真も案外難しい・・・