廃屈な日々〜旅と廃墟の回顧録〜

静岡県を中心にちょっと違った旅の記憶と記録。

滝谷出村遊郭を歩く 福井県坂井市三国町 

名勝東尋坊を有する三国町

九頭竜川の河口に面した漁師町だ。

遊郭としての歴史は古い。江戸時代から戦後の売春防止法が施行されるまでの時代を駆け抜けた。

 

遊郭であった歴史を隠す場所も少なくないが、この町ではそんなことはない。見返り橋と思案橋と呼ばれ、遊郭へ通ずる橋が観光名所として残されている。

 

真新しく立派な造りの三国駅

2023年の夏は日本全国酷暑酷暑酷暑!!

この日は猛暑日手前の気温とあって汗だくになりながら彷徨い歩いた。

 

どこか懐かしく趣のある町。

 

木目格子の装飾もこの土地では珍しくない光景だ。

先述の通り、遊郭の歴史について立て看板に明記されている。

廓が町中に散在する形で遊郭を形成していった様子。明治以降は発展を続け、現在ではありふれた田舎の港町という感じは否めないが、全盛期は賑わいのある繁華街だったそうだ。

 

見返り橋へ向かう。

 

通り沿いには往時を思わせる弁柄の建物も残る。

 

窓の格子が特徴的な民家。

 

店舗の看板から分かる通り、とにかく歴史を感じさせてくれる場所だ。思わず隅々まで目がいってしまう。

 

その中でも私のお気に入りは欧風料理マルカさん。

 

ピンクタイルがびっしり。

コカコーラの看板と相まって味のある建物となっている。木材で目張りされたショーケースも見たかったなぁ。

 

商店街の突き当たりに建つ2軒の地蔵堂

 

隣の坂が見返り橋に通じている。

ここの坂も古い民家が並び、風情ある雰囲気がたっぷりだ。

坂を下ると見返り橋に到着する。

 

こちらは見返り柳と同じ様な由来のネーミング。

 

立て看板が無ければ通り過ぎてしまいそうな短さだ。

 

それもそのはず。現在の辰巳川はドブ川といっても差し障りのないものに整備されている。

 

見返ってみるとこんな感じ。

 

反対側の地蔵坂を見返る。妻帯者なんかは妻の待つ自宅方面を見返りつつも足を運んでしまった者もいたかもしれない。・・・なんて想像を膨らませてみるのも一興だ。

 

続いて思案橋へ行こう。

 

こちらが思案橋。見返り橋と違い、ひと目で橋だと分かる。

 

行くか、行かまいか思案する。

立て看板に艶のある名前とあったが、その通りに思う。この短い橋からは想像できないくらい多くの葛藤があったのだろう。何となく、ここまで来てしまったのなら行く人の方が多い気もするけど。

 

思案橋の手前は必要以上に道が広がっている。これも遊郭跡や赤線跡でよく見かける光景だ。

 

この辺りも風情ある町並みが続く。

 

年代物っぽい防火用の水桶。

 

真田家の家紋であり、三途の川の渡し賃の六文銭。はなびは屋号の名残だったりしたら面白いね。

 

この先にある魚志楼さんはかつての芸妓置屋ということだ。

 

手前には北国というスナックが建つ。

 

北陸の海の幸を味わえる料理茶屋。敷居もそこまで高くなさそうな料金設定だった。

甲殻アレルギーな私には辛い海老料理が売りな様子でスルーしてしまったが、寄っていけば良かったと後悔。ただ、この日はソースカツ丼のメッカであるヨーロッパ軒で牛カツ丼を食べることに頭が一杯だったというのもある。

 

内部の構造は不明だが、建物は長屋のように伸びている。ここを右に曲がるとスナックか小料理屋に転業したと思われる店舗が現れた。

 

この通りはちょうど見返り橋に辿り、遊郭のメイン通りだった思われる。買収防止法が施行されてからも細々と商売を続けていた様子だ。

 

右手には料亭跡も残る。

 

こんな感じで今回の探索は終了。

風情ある町並みが存分に楽しめた。この情緒ある町で、かつてはたくさんの男と女の人生が交差したのだろう。遊郭であることを隠すことなく観光資源に活かす取り組みも私のような人間にはありがたい限り。

 

散策ルートも整備されており、古い町並が好きな人にオススメの観光地だ。

東尋坊あわら温泉にほど近く、機会があれば尋ねてみるときっと満足するはず。