失われた風景に思いを馳せる
元旦の16時10分に起こった令和6年能登半島地震は日常を一変してしまった。
被災された方に対しては本当に何て言ったら良いのか分からない。
私自身も連日の報道で深い悲しみに苛まれたのだが、当事者はその比ではないだろう。言葉にならないとはこういう事かと実感している。
能登半島は昨年の8月に訪れていた。
目的はのと鉄道の廃線散策であったが、輪島市にも寄っていた。滞在時間は短かったものの、火災で消失した朝市通りも散策した。風情のある街並みで平日の朝だというのに活気があったのを覚えている。
午前9時の朝市通り。
「朝市」の名前の通りに朝から出店屋台が開いている。
江戸時代から続く名産品である輪島塗の漆器を売る店舗も多く並ぶ。
漆器は安い工場製の物から職人の作る伝統的な高級品までよりどりみどり。思わず観光客は足を止める。
近くに輪島港があり海産加工物も特産品だ。
私は朝食と昼食を兼ねて河豚の丼を頂いた。半生・肉厚でとても美味しかった。
食べ歩きも自慢のひとつ。さすが奥能登の観光基地と呼ばれるだけある。
地元出身の漫画家である永井豪記念館。
1月24日の報道で展示されていた原画など一部は無事だったことが報じられた。願わくば復興のシンボルとして再建して頂きたい。
それでもこのマジンガーZは燃えてしまったか。もう少しかっこよく撮ってやりたかった。
昭和然とした店舗も魅力溢れていた。
少し目線を変えれば目に付く個性的な店先。
知る人ぞ知る重厚なルネッサンス調のイナチュウ美術館。
路地裏に隠れた素敵な風景も見逃せない。
これら風景は震災が原因の火災で消失してしまった。
どんなに願っても二度と目にすることのできない景色たち。
今までの震災を振り返っても自分が訪れた事のある土地が被害に遭うということは初めてで、感じたことのない喪失感を覚えた。1度訪れただけでこれなのだから、その土地で暮らしていた当事者の気持ちを考えると胸が締め付けられる思いだ。
輪島市は今年もう一度来訪しようと思っており、あえて充分な観光を行わなかった。
朝市通り周辺は風情ある街並みが広く残り、片手間で周るには時間が足りないと思ったからだ。それを後悔してもどうしようもない事か。被災された方に比べたら本当に小さなもの。昨年の思い出を振り返るとともに早期の復興を祈りたい。