人々から忘れられた神域
伊豆市にあった大仁金山裏の山神社。
危険伴う炭鉱に従事する者たちから信仰を集めていたであろう場所。
閉山から約50年。人々の記憶から忘れられた神域は草木に埋もれた姿で待っていた。
石碑に込めた願いの行方を知る者はいない。
落下した扁額は鳥居に寄り添っている。
おそらく訪れた者が形を揃えておいたのだろう。
鳥居には先客がおり、迂回を余儀無くされた。
境内は社へ続く階段と傾いた灯籠が並んでいる。
右奥には太鼓橋の架かる小さい社。
崩壊しかけている階段。
苔むす手水舎。
その全てが美しい。極上の廃空間。
水が溜まり、落ち葉は腐り、新たな生命の源となる。まさに輪廻転生・・・それは仏教か。
”大仁鉱山乃碑”
文字は掠れて読めない部分が多い。大仁温泉の源泉になったという文章があり、鉱山の歴史など書かれていそうだ。
10年で6メートル成長すると言われる杉の木は容赦なく灯籠の間に伸びる。
灯籠に生える苔も千差万別。
折れた灯籠。
雨風にやられたのか丸みを帯びていた。
この灯籠はエイみたいで可愛い顔をしている。
それにしても雰囲気のある場所だ。一瞬の光の加減で表情が変わるのが面白い
この辺りも凄く神秘的な雰囲気があったものの、写真でそれを表現するのが難しい。
まずホワイトバランスくらい合わせようかと自分に言いたい。
本殿を目指す。
隆起した箇所のある階段。このくらいは余裕。
到着。
本当はこういう場所ってレンズを向けてはいけない、けど許して。
かすかに続く信仰の形跡。
中腹から望む境内。
うむ堪能した。このままでは廃神社の魅力に取り憑かれてしまいそうだ。帰ろう。
帰りの道で虚無を撮っていると坑道から熊鈴の音が聞こえてきた。
はてさて、胸にGO PRO、上級者のマニアかと思い挨拶を交わす。そのまま通り過ぎたかと思いきや、こちらに戻ってくるではないか。
「今日はどちらまで行かれましたー?」
ええと、そこに廃神社がありまして、写真を撮りに来ました。
「実は私、時之栖の者でして、この鉱山の遺構を観光資源にできないか調査してたんですよ。このままにしておくには勿体無いと思って。」
まさかの管理者様と遭遇。
まだ検討の段階にも至っていないということであったが、時之栖グループがバックに付いた大仁金山の行く末はどうなることやら。
その際にもう少し上にも社があるという情報を頂いたが、藪が深そうな関係で撤退となった。いつか再挑戦したい。