その①はこちら
原発事故で取り返しの付かなくなった町を征く。
人は消え、バリケードで囲まれた町並みはさながらゾンビ映画のようだった。
10年の時を置き去りにされた町。この先はどんな景色を見せてくれるのだろうか。
鮮魚店だと思われる店舗跡。
シャッターは地震の影響か歪んでいる。中は荒れ、残留物で散らかっていた。
入り口から使われなくなった玩具の重機が物悲しく外を向いていた。
夜ノ森駅周辺は一部が避難解除となっただけで進むことのできないエリアが多い。
私がこれから歩いていく場所も全体から見たらほんの一部だけなんだ。
圧巻の桜並木。
マンホールにも描かれる町の自慢。
春になったらまた来たいな。
デイリーヤマザキでないヤマザキYショップというのがいいよね。
私の大学に併設されていたコンビニもYショップだったなー。懐かしい。
季節外れの桜並木を歩く。
生活音の無い町というのは不気味であるがどこか心地いいとも思ってしまう。
思えば、非日常を味わいたいがために旅を続けている。日常の止まったこの場所はある意味で究極の非日常なのかもしれない。
とはいえ、ここにあった日常は本来ならば続いていた未来があった。
それを安全と言われていた原子力発電所の事故で奪われたのはあまりにも不本意なことだ。
駐在所が建設されるようだ。
夜ノ森駅の開通から徐々にではあるが復興の道を歩もうとしている。
これは・・・!
うわ、初めて見た。私の地域でハトのマークといえばヨーカドーだよ。
大型の駐車場には軽自動車がぽつりと1台。
アスファルトの境目から雑草が力強く伸びていた。
こんな場所でボヤでも起きたら大変なことになりそうだ。
築年数が浅そうな家も等しく空き家となっている。
避難解除がされたとしても10年の時はあまりにも長い。新しい生活に慣れるのには充分な時間だ。
夜ノ森駅から南に500mほど歩いて駅の西口を目指す。
相変わらず人気は少ないものの営みのある住宅もちらほらと見られてくる。
見られるとはいえ、住人がいる家は少ない。境界線付近はほとんど空き家だ。
望遠レンズで遠くを覗く。
除染作業は10年経った今でも続いている。
こういうのは原発作業者向けの住宅なのかな。
社民党のポスターとは珍しい。
ガソリンスタンドから軽快な音楽が聞こえてくる。元気に営業中だ。
ガソリンスタンド周辺から町の雰囲気が変わる。
相変わらず空き地や廃車は見られるが人が近くにいるというだけで町の表情は変わるのだ。
避難解除区域の空き家問題はどうしていくのだろうか。
格安で私に譲ってくださるのなら喜んで買い受けるが・・・
空き地の開発も進められている。
この株式会社イマスは一時帰宅の許可を得た住人向けホテルらしい。
西口へ向かう。
駅前の美容室は営業中。後ろのアパートには車が停まっている。
人の減った町で住人は何を想うのだろうか。
西口を通過して南側へ。
ここからはほとんどの道路で立ち入りの制限が見られた。
駅周辺の探索はこれにて終了。
夜ノ森駅西口。
今更ながら夜ノ森駅(ヨノモリ)って名前はかっこいいな。
近代的な駅舎。現在は無人駅となっている。
待合室は旧駅舎を模したものが建てられていた。
桜が名所となる夜ノ森駅周辺。
原発事故にて奪われてしまった故郷。
ゾンビ映画「28日後・・・」さながらの世界が広がっていた。
この土地に縁もゆかりもなく何者でもない私ですら憤りを覚える。普段から廃墟や廃村など歩いているがそれとはまた違う異常な空間。揺さぶられる感情。悲しいだけじゃなく、どこかで楽しんでいる私もいた。もちろん嬉しくもない。さまざまな思いがぐるぐると頭を巡る。言葉にするのが難しい。
なんとなくだけど桜の名所ということもあってhideの名曲hurry go roundがぴったりな感情。
一度は朽ち果てても桜のようにまた花となって甦るのを祈るばかりだ。
また春に会いましょう。