廃屈な日々〜旅と廃墟の回顧録〜

静岡県を中心にちょっと違った旅の記憶と記録。

劇場通り 旧足利東映プラザ劇場 栃木県足利市

観光エリアに残る映画館跡

足利駅から約1km、定番観光地である鑁阿寺足利学校のある場所の路地へ入ると閉館した映画館とアーチが当時のまま残っている。

 

這い寄る蔦が夏の到来を告げる。

掠れゆく文字が過ぎゆく年月を感じさせる。

劇場通りと描かれたアーチも当時のままであった。

 

ここ足利東映プラザ劇場は1977年に開館し、1999年に閉館となった。

中核となる映画館に加えてスナックなど夜の匂いがするテナント跡が残っている。

 

それにしても四半世紀前と考えると世紀末も随分と遠くなったものだ。

 

この手の映画館は1990年から普及したシネコンの煽りが直撃し経営が大きく傾いたと聞いている。日本映画製作者連盟の記載によると、シネコンの割合は2000年で4割強、2002年に5割を越え、2009年には8割に達したそうだ。

 

衰退していく姿はショッピングモールに駆逐された商店街に近いものを感じる。私たちが享受する便利なものの裏側には泣きを見るものがいることを忘れてはいけない。

 

そろそろ堅苦しい話は止めて、廃墟美的な姿を楽しもう。

 

この季節らしい蔦のアクセントがたまらん。

 

観光地とはいえ、裏通りにある立地で人通りも少なく独り占め状態で堪能できた。

 

中央の階段を登れば映画館へ繋がる。

 

中に入れそうな隙間があるけど入りませんよ。覗き見だけ!

ロマンス劇場という文字があるが、これは2018年公開の映画でロケ地として使われた名残だと思われる。そういうわけで決して管理されていない物件ではないのだ。

 

こういう場所に次回公開の予告などが貼ってあったのだろうか。

 

映画館以外のテナントが夜の店なのも面白い。考えてみたら私の街にあった映画館も免税店や外国人の経営する服屋などちょっぴり怪しい店が多かった気がするな。

 

地方を旅すると映画館跡はよく目にする部類だが、大体が更地になっているか名前だけ残っていたり、建物は無事でもベニヤ板で封鎖されていたりと感傷に浸る隙さえない。

 

そんな意味でも貴重な場所に思う。

足利観光のついでにふらり立ち寄ればノスタルジアを感じる事間違いなし。